Apéritif
「会社、やめたいんだよね」
「やってみたいんだよね」
「気になってるんだよね」
なぜ、やらないのか。
“いつか”はきっと、
予算オーバーしたサンタくらい、来ない。
それに今、これを読みながら歩いていたら、
車に轢かれるかもしれないのに。
(それでも、やらない理由は山ほどあるんだよね)
なのに、みんな口を揃えて言う。
魔法の言葉。
ちちんぷいぷいぷーい!
Débordement
過去のわたしは、魔法使いだった。
「やりたい」「やってみたい」
あちこちで呪文を唱えていた。
今のわたしは、呪文の唱え方を忘れた。
「やりたい?」
じゃあ、やればいいじゃん。
今すぐ、この瞬間から。
今のわたしを見た過去のわたしはきっと、
「でも」から始まる素敵な呪いをかけてくる。
でも、お金がない。時間がない。場所がない。親が反対する。恋人に呆れられる。
友達に何か言われそう。
「やらない言い訳を探してるね」
尊敬している人にも、かつてそう言われた。
そうだ。
自分の“やりたい”気持ちをしまいこんで、
どうやって人生を楽しむつもりだったんだろう。
何をすればいいか、何をすべきか、くだらない。自分は何をしたいのか、何をしてるのが好きなのか。過ぎた時間は二度と戻らない。
そして、今日、会社をやめた。
親は安定してほしいと言っていた。
恋人はちゃんと働くようになって安心したかも。
友達は、いつまで続くか賭けあっていた。
貯金はゼロ。
スキルもない。次の仕事もない。
テレビも無ェ、ラジオも無ェ……
でも、わたしにはある。
一番大事なものがここに。
Mélopée
このリスクを、不安定を、今。この瞬間の不安を楽しもう。
「で、どうするの?」って聞かれても、考えてないし、知らない。
どうにかなるし、どうにかする。
とりあえず、
新たな挑戦に——乾杯。