Apéritif
令和7年、7月7日。
ラッキーセブンセブンセブン。
朝届いた、母親からのお祝いメッセージ。
「お誕生日おめでとう!ママ、七夕御膳楽しみにしてたから、早めに産まれてきてくれてありがとう!」
そういえばわたしを産んだ直後のご飯、ペロリ完食して看護師さんを驚かせていたそう。
母親はものすごくパワフルで、近所では“鉄人”なんて呼ばれていた。
仕事をしながら、毎日かかさずお弁当を作ってくれて、学校や部活、習い事、行事すべてに来てくれた。
学校をサボっても何も言ってこなかったし、むしろ旅行に連れてってくれたりもした。
いつも前向きで、明るくて、強くて、変なダンスをして。わたしに何が起こっても、いつでも味方でいてくれる。
泣いてるとこなんて見せないそんな母を、1度だけ泣かせたことがある。
中学の頃、死んでしまいたいと思って遺書を書いた。よくある思春期の心の闇だろう。
何度書いても思うように書けなくて、部屋のゴミ箱に捨てていた。それを、母親が見つけて読んでいた。今考えれば勇気もないくせにって思うけど、当時のわたしは頑張って生きようとしてたんだと思う。
母親が悲しむ姿を目の前にして、絶対死んじゃダメだって思った。
当時は見えてる世界が狭かった。良い逃げ方を知らなかった。
大人になってからも、最後に頼ってしまうのは母だ。
「逃げていいんだよ。まだ見つかってないだけで、輝ける場所は絶対あるからさ。なんも心配しなくていいから」
電話口でたった一言、全てが救われる瞬間だった。
どんな仕事も続かない、世間でいうところの“普通”もまともにできないわたしを、なぜそこまで深く愛してくれるのか。
と、ずっと不思議だったけど今なら分かる。
それは、自分の子供だからでも、わたしが何かお宝を持ってるからでもない。
愛情深い母がいたから、わたしは今こうして幸せに生きてる。産んでくれて、大切にしてくれてありがとう。
Débordement
父親もまた、わたしの相棒であり、大きな支えだ。
小さなころから、休みの日はあちこち遊びに連れてってくれた。公園で走り回ったり、プールや自転車の練習など、何でも付き合ってくれた。
何より、一緒にあれこれ考えたり話し合いをする時間が大切だった。それは今も変わらない。政治の話、哲学的な話、最近のニュース、色んな視点から考えたり冗談を言い合う。
夢を追いかけるきっかけをくれたのも父だ。勉強・スポーツ・芸術・人間関係、何もかも人並みだったわたしに希望をくれた。
「自分のやりたいと思ったことを好きにやりな。」
そんなどこにでもありそうな言葉が、何よりも支えだ。
父親は、わたしを含め家族を支えるために、毎日一生懸命働いてくれていた。1週間ごとに朝出勤と夜出勤を繰り返す仕事。生活リズムがぐるぐる変わる中、よく遊びに付き合ってくれていた。凄いことだ。わたしにはきっとできない。
父親は心配になるくらい優しい人だ。言いたいこともぐっと堪えて、何か言われても笑って受け流して、争いを避ける人だった。傷つけたり心配させることが怖いんだと思う。
そう考えると、何でも言いたい放題言って場の空気を壊すわたしとは正反対だ。
歴史が大好きで、戦争はもちろん反対しているけど、断片の憧れみたいなものも持っている。
「1つの目標があって、それに命をかけてみんなで全力になれるのってなんかいいよね」
何かに命を燃やす生き方に憧れているんだと思う。
わたしが今、夢を持って命を燃やせているのは父親のおかげなんだ。愛を持って、自由に育ててくれてありがとう。
母も父も、自分のことはとことん後回し。
何でも自由にやらせてくれた。いい意味で放任主義だった。
もう1つ、両親の教育方針としてありがたかったものがある。
それは、どちらも同じタイミングでは怒らないこと。
ここでの怒るは、物事に対してイライラすることじゃなく、教育、教えて育てるという意味の怒るだ。
「お母さんとお父さん、どっちも怒ってたら逃げ場が無くなるでしょ?」
と。どんなときにも逃げる場所はあると、大きな解釈もできる。
Mélopée
今日は誕生日だから、産んでくれた両親に感謝する日にした。
誕生日プレゼントが何とか、歳がどうとか、そんなの正直どうだって良くて。
わたしがわたしとして、また誕生日を迎えられたことが、わたしにとってのプレゼントなわけです。
まー、敷いて何が欲しいかと言われれば、そうだなあ。
演奏し放題の部屋・無限チョコレート・みんなで集まれる森の中の家・オチビたちと昼寝できる畳の部屋・地域の人が気軽に来れる映画館・頭撫でてくれる人間モドキ・防音室・テクニクスSL-1200MK3のレコードプレーヤー・イチゴ畑・バスケットコート・1年中降る雪つき露天風呂・コタツから出ちゃだめチケット・人間の持つ平均的な肺活量……
え?欲まみれ?
いいよね、人間だもの。
直接でなくとも、関わってくれるすべての人に感謝してる。
わたしを見つけてくれて、支えてくれて、
今日も一緒に生きてくれてありがとう。